バツイチ 1

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足が地に付かない感じでふわふわ歩いていた。
ん?隣に居るのは・・・なんていう名前のひとだっけ?

すこしづつ思い出してきた。
えっと・・・
今日は土曜日でオフ会に出た後、
らぶちゃんとふたりで飲みなおそうということになり
スナックへ行って・・・
そこで2人組の男の人といろいろ話しているうちに
家が近所だという事がわかって送っていってもらうことになって・・・・
私は助手席、らぶちゃんは後ろに座ったんだった。

そこまで思い出したら
頭がガンガンしてきた。

いきなり道が二つに分かれ
右がおとこ左がおんなと書いている看板がみえた。

「じゃあ、俺はこっちに」
といって隣の男がさっさと右に行ってしまった。

いちおう看板通りに行ったほうがいいのかなと思いながら
しょうがないから私は左に進んだ。

背景はピンクに変わり
その先に妙ちくりんな髭を生やして桃色の長い衣を着た
ちょっと小太りのじいさんがいた。

「はい、ここに座って。」

妙に甲高い声が事務的に言った。
またしょうがないから私はそこに腰掛けた。

「はい、鎌田景子、34歳ね。
あんたは事故に遭って今死ぬところだよ。」

「はぁ?」
と私はびっくりしながらも実はどこかで
どうもそうじゃないかと思っていたんだけど。
でも、こんな死に方ってあんまりだ。
っていうかみっともない。

「しょうがないねえ、そういうことになっちゃったんだから。」
じいさんはまた事務的に言った。

「あの・・・ここは何するとこですか?」
「う〜ん。いちおう簡単に思い残す事などを言ってもらって
納得できないだろうけど形だけでも納得してもらおうという主旨で
開設された場所と言う感じかな。」
「あ、じゃあ、裁判所って訳じゃないんですね。
あなたが閻魔様というわけじゃ・・・。」

すこしほっとした。

「あとがつかえてるからね、時間は10分ね。」
ピンクじいさんがそっけなく言う。
「はい、思い残す事は?」

・・・そんなに急に言われたって
そりゃ並べればきりがないけど。
水9のドラマ後2回で最終回だったのに。
あ。押し入れの掃除が途中だわ。
今日間に合わなくてほっぽって出たんだった。
来週は10回目の結婚記念日で
親子3人でディナーの予定で・・・。


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2002/02/12