バツイチ 3

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指示どうりに歩いていくと列があった。
ここでも並ぶのか。

並んでる人たちは老若男女
真っ直ぐ向いてる人もいればうつむいている人もいる。
ここでは男女別じゃないらしい。
セキュリティチェックのゲートのようなものを一人ずつくぐって行き
人々はくぐったとたんに姿が見えなくなっていった。

あと一人で私の番になった時、急に前のおばあさんがひっくり返った。
思わずつまずきそうになったがかろうじてよけた。
目の前にゲートがあった。
ここまで来たら本当にもうしょうがない。
「先、行きますね。」
おばあさんに声をかけて私はゲートに向かった。
くぐる前に「ごめんなさい」と小さい声で私は誰にともなく謝った。

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がらんがらんがらんがらん。

頭の上で騒々しい鐘が鳴った。
これで、死んだのか・・と思った途端
こんどは白い服の痩せたおじいさんがそばに来た。

「ありゃ、おめでとう。」
は?
「10万人毎に一人、生き返るチャンスがあるんだよね。」
えーーー。聞いてないよ、そんなの。
「考える時間は30秒、どうする?」

私は何故か一瞬躊躇した。
遣り残した事はたくさんあるけれど
どれもたいしたことじゃない気がするし
これから生きていくほうが大変なような気もした。

だけど次の瞬間。

もう一度生きたい、と私は強く強く思った。

「帰ります。」

「そっか。ここでの事は覚えてないし、
身体がまったく元の状態かどうかは保証しない。
それでも、いいかね?」

今度は私はためらわなかった。
「はい。」

「じゃ、一つだけ準備ね。」
そう言って真っ白じいさんは私の足首に小さい十字の印をつけた。
「生き返った印だよ。
これがほんとのバツイチ。ははは」

あんまり面白くなかったけど
でも、覚えて無くてもきっとこれを見たら心が疼くだろう、と思った。

「さ。ここから飛び降りればいい。」
飛ぶ前に後ろを振り返ったらさっきのピンクじいさんがウインクした。

「結局は自分が、でしたね。」

私は目を開けたまま手を広げて穴の中へ飛び込んだ。


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2002/02/12