あの日から(真っ直ぐ)

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駅前の喫茶店に那美は待っていた。
「わたしは行かない。」と那美は墓参りは辞退した。

「僕の考えはこうだ。君はどうしたい。」
と僕は離婚届を手渡した。
那美は無言で受け取った。

「僕たちは、思考も感情も、ほとんどどこかよそに向けていて
自分の問題を自分以外のあらゆるもののせいにしていたと思う。
これ以上勇太と麻奈を傷つけたくないんだ。」

「ふたりに関しては私たちが責任をとっていかなくちゃならないわね。」
「これから父親として出来るだけのことをするよ。」
「私も・・・今までの償いを含めて。」
「・・・僕たち、夫婦じゃなかったら結構いい関係かもな。」

那美は笑った。
「あなたがそうやって自分で決めるのはじめてみたような気がするわ。」
「いままで、すまなかった。」
僕は心から謝った。

「私も、あなたを解ろうとしなくてごめんなさい。」





僕は喉仏の下、鎖骨の間の気管切開の跡を触った。
この傷の下に唯子のキスマークがある。
これで大丈夫、と彼女は確かに言った。

「あなたは生きなさい。」

声が聞こえた。
そうだね。すべてを抱えて。
僕はあの日から、これからの人生を
はじめて自分で選んだような気がした。

試行錯誤の新しい日々が始まる。


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2002/11/23