あの日から(右)

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駅前の喫茶店に那美は待っていた。
「わたしはここで待つわ。」と那美は墓参りは辞退した。

「入学式に間に合ってよかったわね。」
「本当だね。」
「・・・長かったわね、半年。」
「大変な思いをさせてすまなかった。」
僕は謝った。

「あなた、変わったわね。あの地獄のリハビリのせいかしら。」
那美が笑って言った。
「僕にはおまえも変わったように思うよ。」





「・・・行きましょうか。」
「そうだな。」

そのあと麻奈の入学式の服を買いに行くことになっていた。

僕は喉仏の下、鎖骨の間の気管切開の跡を触った。
この傷の下に唯子のキスマークがある。
これで大丈夫、と彼女は確かに言った。

これからの事はわからない。
まだ目を背けている事があるのも確かだった。
だけど自分が変わると関係も少しずつ変わるのだと
この半年で僕は少しわかったような気がした。

「あなたは生きなさい。」

声が聞こえた。
そうだね、すべてを抱えて。
僕はあの日に止まっていた自分の人生が
また動き出したような気がしていた。


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2002/11/23